【技能実習】名義貸しの禁止について監理団体の許可取消し事例を基に弁護士が解説

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2021.04.23

 

 

 

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1.令和3年4月23日付け監理団体の許可の取消しと技能実習計画の取消しの公表

 

 

法務省と厚生労働省は、令和3年4月23日付けで、四国被服工業協同組合、協同組合グローバル・ネット及び備中技研協同組合に対し、監理団体の許可の取消しを通知しました。また、同日付けで、播磨加工事業協同組合に改善命令を行いました。


厚生労働省の頁はこちら

令和3年に入って、1月19日(1件)、1月29日(1件)、2月12日(2件)、2月26日(2件)、3月26日(1件)と今回(3件)の計6回、監理団体の許可取消しが合計11件出されています。外国人技能実習機構が監理団体の不正を厳しく調査している結果であると言えるでしょう。

今回の許可取消しでは、3件中2件が「名義貸しの禁止」に違反していることを理由として監理団体の許可を取り消されています。

そこで、今回は、技能実習法で禁止されている「名義貸しの禁止」とはどのようなものか。また、適法に委託できるものはどのようなものかについて解説していきます。

 

この記事を読むと、以下の①・②が理解できます。
①技能実習法における「名義貸しの禁止」とはどのようなものか。
②「監理事業」のうち、適法に委託できるのはどのような範囲のものなのか。

 

2.名義貸しの禁止とは

 

 

外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号、以下「技能実習法」といいます)は監理団体が他人に「監理事業」の名義貸しをすることを禁止しています。

 

(名義貸しの禁止)第三十八条 監理団体は、自己の名義をもって、他人に監理事業を行わせてはならない。

(定義)第二条 この法律において「技能実習」とは、企業単独型技能実習及び団体監理型技能実習をいい、「技能実習生」とは、企業単独型技能実習生及び団体監理型技能実習生をいう。
2~8 略
9 この法律において「実習監理」とは、団体監理型実習実施者等(団体監理型実習実施者又は団体監理型技能実習を行わせようとする者をいう。以下同じ。)と団体監理型技能実習生等(団体監理型技能実習生又は団体監理型技能実習生になろうとする者をいう。以下同じ。)との間における雇用関係の成立のあっせん及び団体監理型実習実施者に対する団体監理型技能実習の実施に関する監理を行うことをいう。
10 この法律において「監理団体」とは、監理許可(第二十三条第一項の許可(第三十二条第一項の規定による変更の許可があったとき、又は第三十七条第二項の規定による第二十三条第一項第二号に規定する特定監理事業に係る許可への変更があったときは、これらの変更後のもの)をいう。以下同じ。)を受けて実習監理を行う事業(以下「監理事業」という。)を行う本邦の営利を目的としない法人をいう。

要するに、監理団体は、他人に自己の名義をもって以下の①及び②を行わせることが禁止されている、ということです。

① 企業と技能実習生の雇用関係の成立のあっせん
② 企業に対する団体型技能実習技能実習の監理を行うこと

 

令和3年4月一部改正技能実習制度運用要領275頁は、名義貸しの禁止の趣旨と罰則について以下のとおり記載しています。監理団体の許可制を取っている技能実習法からすれば名義貸しを禁止することは当然の要請であると言えます。

 監理事業は、欠格事由に該当せず、事業遂行能力等について許可基準に照らして審査を受けた法人が自ら行うものでなければ許可制度自体の維持が困難となるため、許可を受けた名義を他人に貸して監理事業を行わせることは禁止されています。
これに違反した場合には、罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の対象となります(法第109条第4号)。

なお、監理団体の許可(法第23条第1項)を受けずに実習監理を行った者=名義貸しをうけた「他人」についても、罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の対象となります(法第109条第1号、無許可実習監理罪)。

 

3.業務委託が許される範囲

 

もっとも、技能実習法は、「監理事業」の名義貸しを禁止していますが、「監理団体の業務」の全てについて委託を禁止している訳ではなく、監理団体が自ら責任を有した上であれば、一部補助的な業務を中心に委託することが認められます(令和3年4月改訂技能実習制度運用要領275~277頁)。

監理団体の業務 自ら行うべきもの 委託可能な業務
①入国前講習及び入国後講習 入国前講習及び入国後講習の企画立案 監理団体が企画した入国前講習及び入国後講習の講師の業務(適切な者が講師となっている場合に限る。)
技能実習に係る雇用関係の成立のあっせん  実習実施者等からの求人及び技能実習生等からの求職の申込みを受け、実習実施者等と技能実習生等との間における技能実習に係る雇用関係の成立のあっせんをすること
(例)
・外国の送出機関との協議や交渉
・実習実施者等、技能実習生等との協議や交渉 等
※ 外国の送出機関から提示を受ける技能実習生候補者を事前に絞り込ませることや送出国に赴いて技能実習生候補者と面接を行うことも含まれる。
上記に該当する業務であっても、補助者としての業務に過ぎないもの
(例)
・協議や交渉に同席し、意見を述べること
・送出国における技能実習生候補者との面接会場の設営 等
技能実習計画の作成指導  監理団体の役職員が、実習実施者に対して技能実習計画の作成についての監理団体の意見を提示、説明して指導すること
※ 指導の前提としての意見の検討も含まれる。
上記に該当する業務であっても、補助者としての業務に過ぎないもの
(例)
・実習実施者が作成してきた計画案について外部専門家として検討させ意見を述べさせること
・実習実施者への意見伝達や説明の会場に同席させ意見を述べさせること 等
④監査 監理団体の役職員が、監理責任者の指揮の下で、規則第52条第1号イからホまでに掲げる方法により監査を行うこと
(例)
・ 技能実習の実施状況の実地確認
・ 技能実習責任者及び技能実習指導員から報告を受けること
・ 在籍技能実習生の4分の1以上との面談
・ 実習実施者の事業所における設備の確認・帳簿書類等の閲覧
・ 技能実習生の宿泊施設等の生活環境の確認
上記に該当する業務であっても、補助者としての業務に過ぎないもの
(例)
・ 技能実習の実施状況の実地確認に同行すること
・ 技能実習生との面談において通訳を行うこと
・ 監査を自ら行う役職員の指示により設備の確認・帳簿書類等の閲覧を行うこと
※ 規則で求めている3か月に1回という頻度以上に実習実施者への監査を行った場合において、省令で求めている頻度を上回る部分の監査業務は委託することが可能です。
⑤技能実習生の相談対応 監理団体の役職員が自ら技能実習生からの相談に応じる体制を整備すること
※ 監理団体の役職員自身による相談体制に加え、外部の者に委託しての相談体制を整備する場合においても、技能実習生が役職員との面談を希望したときは、役職員自身が応じる必要がある。
※ 上記の場合において委託した外部の者に対して相談がされた場合には、監理団体の役職員が、その相談内容に応じて、実習実施者及び技能実習生への助言、指導その他の必要な対応を行う必要がある。
上記に該当する業務であっても、補助者としての業務に過ぎないもの
(例)
・監理団体の役職員自身による相談に対応する際の通訳 等

上記をみると、「監理団体の業務」が「監理事業」よりも広い概念として用いられていることが理解できるかと思います。

技能実習法施行規則第10条第2項第7号で明確に「適切な者」への委託を認められている「①入国前講習及び入国後講習」と、外部の者に委託しての相談体制を整備することも条件付きで認められている「⑤技能実習生の相談対応」と②~④の委託が許される範囲が異なるのは、「監理事業」そのもののなのか、監理事業ではない監理団体の業務の一部なのかによって整理がされている、ということかと思います。

実際、「④監査」に関し、令和3年4月技能実習制度運用要領190頁では

当然のことながら、監査は監理団体が行う監理事業の根幹業務ですので、外部に委託することができないことは言うまでもありません。

と記載されているところです。

委託できるところに「例」とあるように、これらはあくまでも例示に過ぎません。最終的には「監理事業」の本体の委託が禁止されていることを前提に、個別に検討した上で判断がなされることになります。

なお、あくまで「監理団体が自ら責任を有した上」での一部「補助的な業務」を中心に委託を認められるものですので、委託先の選定も適切に行わなければなりません。

 

 

 

4.今回の取消事例について

 

今回監理団体の許可取り消し処分を受けた協同組合グローバル・ネット及び備中技研協同組合は、いずれも以下の処分理由で技能実習法第37条第1項第4号の規定に基づき、監理団体の許可を取り消されています。

自己の名義をもって、他人に監理事業を行わせていたことから、技能実習法第 37 条第1項第4号に規定する監理団体の許可の取消事由に該当するため。

要するに名義貸しの認定を受けたので技能実習法に違反だ、ということですね。

(許可の取消し等)
第三十七条 主務大臣は、監理団体が次の各号のいずれかに該当するときは、監理許可を取り消すことができる。}
一 第二十五条第一項各号のいずれかに適合しなくなったと認めるとき。
二 第二十六条各号(第二号、第三号並びに第五号ハ及びニを除く。)のいずれかに該当することとなったとき。
三 第三十条第一項の規定により付された監理許可の条件に違反したとき。
四 この法律の規定若しくは出入国若しくは労働に関する法律の規定であって政令で定めるもの又はこれらの規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。
五 出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき。
2 主務大臣は、監理許可(一般監理事業に係るものに限る。)を受けた監理団体が第二十五条第一項第七号の主務省令で定める基準に適合しなくなったと認めるときは、職権で、当該監理許可を特定監理事業に係るものに変更することができる。
3 主務大臣は、監理団体が第一項第一号又は第三号から第五号までのいずれかに該当するときは、期間を定めて当該監理事業の全部又は一部の停止を命ずることができる。
4 主務大臣は、第一項の規定による監理許可の取消し、第二項の規定による監理許可の変更又は前項の規定による命令をした場合には、その旨を公示しなければならない。

 

 

 

5.まとめ

 

名義貸しの禁止は監理団体の許可制の根幹にかかわるものゆえ一度違反の認定をされると許可の取消し以外の結論は出ない可能性が極めて高いです。

したがって、監理団体の業務の一部を委託する場合であっても「監理事業」について正確な理解をした上で実施しなければなりません。

監理団体の存続にかかわる問題ですから、一度専門家のチェックを受けることをお勧めします。

当事務所も監理団体の適法性監査を行っておりますので、ご興味のある方は御電話かお問い合わせフォームからお問い合わせください。

この記事を書いた「Linolaパートナーズとは」

弁護士
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片岡 邦弘

Linolaパートナーズ法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属)
外国人労務特化型弁護士/入管法届出済弁護士
1978年東京生まれ、東京在住

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