知らなかったではすまされない!事例で学ぶ「不法就労助長罪」の落とし穴【企業向け】

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2026.02.20

1 はじめに 「これは、他人事ではありません」

外国人労働者の増加に伴い、企業が意図せず「不法就労助長罪」という犯罪を犯してしまうリスクが、今やあらゆる事業者にとって現実の経営課題となっています。

「留学生のアルバイトだから大丈夫」「派遣会社が紹介した人材だから安心」…その思い込みが、あなたの会社を窮地に追い込むかもしれません。

不法就労の取り締まりが強化されている今、正しい知識を持つことが会社を守る唯一の手段です。

この記事では、実際に起きた事例をもとに、企業が陥りがちな典型的な「落とし穴」とそれを回避するための具体的な対策を外国人労務の”現場”に強い弁護士が解説します。

法律の重い罰則を理解するために、まずは「不法就労助長罪」がどのような犯罪なのか、その本質から確認していきましょう。

2 「不法就労助長罪」とは? 会社が問われる重い責任

参考

不法就労助長罪を理解するには、まず「不法就労」が何かを知る必要があります。

不法就労とは、法律に違反して外国人が働くことであり、主に以下の3つのパターンに分類されます。

【不法就労の3つの典型パターン】

  • 不法滞在者の就労
    在留期限切れ(オーバーステイ)や密入国した外国人を働かせるケース。
  • 就労許可のない外国人の就労
    「短期滞在(観光)」ビザなど、働くことが許可されていない在留資格で働かせるケース。
  • 許可範囲を超えた就労
    許可された仕事内容や時間を超えて働かせるケース。
    ※このパターンが最も企業の落とし穴になりやすく、専門家の間では「なんちゃって技人国」として問題視されています。

そして、これらの不法就労をさせたり、手助け(あっせん)したりする行為を罰するのが「不法就労助長罪」(出入国管理及び難民認定法 第73条の2)です。

この罪の最も恐ろしい点は、たとえ知らなかったとしても、知らなかったことに過失が「ない」と認められない限り免責されない、ということです。

過失が「ない」(=善意無過失)と認められるハードルは極めて高いです。

「知らなかった」という言い訳は一切通用しませんし、自分なりに確認をしたつもりでも「過失あり」とされてしまうことは珍しくありません。

2025年の法改正(2027年4月1日施行予定)により、その罰則は企業経営に致命的なダメージを与えかねないレベルまで引き上げられました。

罰則項目改正前 (旧法)2027年4月1日以降 (新法)
懲役刑3年以下5年以下
罰金刑(個人)300万円以下500万円以下
罰金刑(法人)300万円以下最大1億円の可能性
併科懲役か罰金のいずれか懲役と罰金の両方が科される可能性あり
※法人への高額罰金は「両罰規定」によるもの。

両罰規定とは、従業員が違反行為を行った場合、その行為者だけでなく、監督責任を負う法人(会社)にも罰金が科されるという規定です。

これは単なる罰金ではなく、中小企業を倒産に追い込み、大企業の社会的信用を永久に失墜させかねない金額といえるでしょう。

深刻な法的リスクを理解したうえで、企業がどのような状況で意図せず法を抵触してしまうのかを次に見ていきましょう。

これら3つの実例は、すべての経営者と人事担当者への重要な警告となりますのでしっかりとおさえてください。

3 【事例紹介】あなたの会社は大丈夫?よくある3つの落とし穴

ここでは、弊所に寄せられる事例としても昨今増えつつある典型例をあげて解説します。

既に報道でも度々見聞きする事例ですので、しっかりとおさえておきましょう。

落とし穴①|「専門職」で採用したはずが…業務内容の不一致

有名食品メーカーの中村屋は、人手不足を解消するため、ネパール人6名を「通訳」業務などを前提とする在留資格(技術・人文知識・国際業務)で受け入れました。

しかし、彼らに実際に任されたのは、工場のラインでの肉まんの製造やあんみつの盛り付けといった単純作業でした。

採用担当の係長は「違法と分かっていたが、人手不足解消のためだった」と容疑を認め、結果として会社と共に書類送検されました。

このケースは、在留資格で許可されている専門的業務と実際の業務内容が一致していない典型的な違反です。

【 教 訓 】
在留資格は「職種名」ではなく「実際の業務内容」で判断されます。
たとえ「通訳」や「マーケティング」として採用しても、仕事の実態が工場のライン作業や店舗の清掃・配膳であれば不法就労にあたります。

落とし穴②|「人手不足だから」と頼んだ結果…留学生の超過労働

人気ラーメンチェーン「一蘭」は、複数の店舗でベトナムや中国からの留学生アルバイトを雇用していました。

しかし、一部の留学生は法律で定められた上限(週28時間)を大幅に超えて働かされており、中には週39時間以上働き、月に21万円もの給与を得ていた学生もいました。

留学生が「資格外活動許可」を得て働く場合、労働時間は原則週28時間以内(大学等の長期休暇中は週40時間まで)に制限されます。

この上限を超えて留学生を働かせていたことで企業の管理責任が問われました。

結果、同社の社長や店長、そして法人としての会社も不法就労助長罪の疑いで書類送検される事態となりました。

【 教 訓 】
留学生を雇用する場合、企業には労働時間を管理する責任があります。
「人手不足」は理由にならず、他のアルバイト先での勤務時間も合算して週28時間を超えていないか、確認する義務があります。

落とし穴③|「派遣だから」という油断…問われる受入企業の責任

ある人材派遣会社は、「技能実習」の在留資格を持つベトナム人たちを、本来の実習先とは異なる水産加工会社に派遣し、働かせていました。

また、別のケースでは、警備会社が「通訳」名目の在留資格を持つベトナム人派遣社員を受け入れ、実際には警備員として働かせていた事例も摘発されています。

これらのケースでは、労働者を送り出した派遣元だけでなく、労働者を受け入れた派遣先企業も責任を問われかねません。

労働者が在留資格で許可されていない業務を行っていた場合、派遣元と派遣先の両方が不法就労助長罪の対象となり得るのです。

【 教 訓 】
派遣や業務委託であっても、受入企業は労働者の在留資格と業務内容が一致しているかを確認する責任を免れません。「派遣会社が確認済みだろう」という思い込みは通用せず、不法就労の片棒を担いだと見なされるリスクがあります。

これらの落とし穴は、決して特殊な例ではありません。

では、どうすれば自社をこうしたリスクから守れるのでしょうか。

ここからは、今日から実践できる具体的な対策を解説します。

4 どうすれば会社を守れる?今日からできる具体的な対策

不法就労助長罪の免責要件

「過失がない」=免責されない

過失がないといえるために、企業側はどのような対策を日頃から行うべきなのでしょうか?

外国人雇用における最も基本的かつ重要な対策です。

下記、3つのステップを徹底することが、いざというときに「過失なし」と認めてもらうための最低限のハードルといえるでしょう。

この記事でご紹介する“偽造を見抜く3つのステップ”は、いずれも、今日から始められる対策ですのでぜひ実践してください。

ステップ1|原本の目視確認

コピーは絶対に不可かつ必ず現物で確認します。

【原本の目視確認事項】

・顔写真と本人が一致しているか
・在留期限は切れていないか
・「就労制限の有無」の欄、裏面の「資格外活動許可欄」に許可スタンプがあるか
 など

ステップ2|公式アプリでICチップを読み取る

在留カード等読取アプリケーション
出典:出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション」

出入国在留管理庁が無料で提供している「在留カード等読取アプリケーション」をスマートフォンにインストールし、カードに内蔵されたICチップの情報を読み取ります。

これにより、カード券面の情報が偽造・改ざんされていないかを確実に確認できます。

ステップ3|失効情報をオンラインで照会する

在留カード等読取アプリについて
出典:出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリが便利になります」
対象となるカードが盗難などで失効扱いになっていないかを確認し、二重のチェックをかけることが重要

令和7年11月14日以降は、在留カード等読取アプリから失効情報照会が利用できるようになりました。

このアプリを利用することで券面情報の確認をより正確に行うことができ、失効情報照会を行うことで在留カードの有効性を確認することができます。

アプリを利用する場合は、併せて失効情報照会も確認しましょう。

「在留カード等番号失効情報照会」ページで、カード番号と有効期限を入力するだけのかんたんな手順で確認することができますので忘れずに行ってください。

なお、失効情報照会については、2026年1月5日からURLが下記へと変更していますのでご注意ください。

出入国在留管理庁在留カード等番号失効情報照会

対策2|最も危険な落とし穴―業務内容とビザの「適合性」を徹底検証する

在留カードの確認と同じくらい重要なのが、任せる業務内容と本人が持つ在留資格の「適合性」の検証です。

特に「技術・人文知識・国際業務」ビザは、専門知識を活かすホワイトカラー向けの資格であり、単純労働は認められていません。

以下に業界別のOK・NG事例を示しますのでご参考になさってください。

業界認められる業務(OK例)認められない業務(NG例)
ホテル・旅館外国語スキルを活かすフロント業務、海外向けマーケティング、宿泊プランの企画立案主として宿泊客の荷物運搬、ベッドメイク、客室清掃、駐車場の誘導
製造業生産工程の管理、品質管理、技術設計、海外取引先との交渉主として単純な組立ライン作業、製品の梱包・箱詰め、部品の仕分け
飲食業新メニュー開発、マーケティング戦略、店舗の経営管理、海外展開の企画主として皿洗いや調理補助、単純なホールでの配膳、清掃

肩書だけ「マネージャー」としても、実態が伴わなければ違反となります。業務内容に少しでも不安があれば、専門家に確認することが不可欠です。

対策3|「就労資格証明書」を最強のリスクヘッジとして活用する

特に転職者を採用する場合、活用すべきなのが「就労資格証明書」です。

これは、新しい会社・新しい業務内容で働くことが、現在の在留資格の範囲内であることを出入国在留管理庁が公式に証明してくれる、いわば「入管のお墨付き」です。

これを取得しておくことで、企業は適法性を公的に担保でき、将来の在留期間更新時に「資格に合わない」として不許可になるリスクを劇的に減らすことができます。

社内で従業員の業務内容を大きく変更(配置転換)する際にも同様に有効であり、コンプライアンス体制の根幹をなす安全策といえるでしょう。

5 サマリー|適正な雇用は会社の生存戦略

「不法就労助長罪」は、「知らなかった」では決して済まされない、事業の存続を根底から揺るがす犯罪です。

2027年4月1日以降は厳罰化により、そのリスクは無視できるレベルではありません。

本資料で解説した在留カードの鉄壁3ステップ確認や、業務内容と在留資格の適合性チェックは、もはや単なる法律上の義務ではなく、会社を破綻から守るための必須の経営リスク管理です。

適正かつ合法な雇用は、企業を法的・経済的な危機から守るだけでなく、外国人労働者を不当な搾取から守り誰もが安心して働ける健全な職場環境を築きます。

少しでも判断に迷うことがあれば、自己判断は最大の敵となりえますので注意してください。

なぜなら、この分野の情報はインターネットやAIでもまだまだ正確性に欠ける情報がほとんどだからです。

それだけ難易度が高く、扱える専門家が少ないことが理由のひとつといえるでしょう。

昨今、弊所へ寄せられる事例をみても、弁護士などの専門家への相談は単なる経費ではなく、会社の未来を守るための必要不可欠な投資であると断言できます。

この記事を書いた「Linolaパートナーズとは」

弁護士
弁護士

片岡 邦弘

Linolaパートナーズ法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属)
外国人労務特化型弁護士
1978年東京生まれ、東京在住

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