【育成就労】その外部監査人で大丈夫?「頼めなくなる」リスクと新要件を外国人労務特化型弁護士が徹底解説

2026.04.03

2027年(令和9年)4月1日の施行に向けて準備が進む「育成就労制度」。

これまでの技能実習制度が発展的に解消され、新たに「監理支援機関」として許可を受け直すにあたり、多くの組合や団体の担当者様が頭を悩ませているのが2027年4月15日からはじまる監理支援機関の許可の申請(施行日前申請)にあたって必要な「外部監査人」の選任ではないでしょうか。

「これまでお願いしていた先生に、そのままお願いすればいい」そう考えていると、許可申請の段階で「要件を満たさない」としてはねられてしまうリスクがあります。

育成就労制度では、制度の適正化を担保するために、外部監査の中立性・独立性がより厳格に求められるようになります。

特に、監査対象となる「受入れ企業(育成就労実施者)」との関係性においては、これまで以上に慎重なチェックが必要です。

本記事では、育成就労制度における外部監査人の要件を詳細に解説し、「今まで依頼していた人に頼めなくなるケース」を具体的に解説します。

監理支援機関への移行を検討されている皆様は、ぜひ今のうちに監査体制の総点検を行ってください。

1 「外部監査人」が重要な理由

REASON

まず、制度における外部監査人の立ち位置を再確認しましょう。

監理支援機関は、受入れ企業(育成就労実施者)に対して指導・監督を行う立場ですが、運営費(監理支援費)を受入れ企業から受け取ることから、どうしても「お客様」である企業に対して強く指導できないという構造的な課題(利益相反)を抱えがちで中立的な業務の運営を行うことが難しい側面が存在することも事実です。

そこで、法律は監理支援機関の業務運営が適正に行われているか中立的な立場からチェックする機能を求めています。

これが「外部監査」です。

また、育成就労制度における監理支援機関の許可要件(法第25条第1項第5号)において、新たに「外部監査人による監査(外部監査の措置)」を講じることが完全義務化されました(※技能実習制度で認められていた「指定外部役員」という選択肢は廃止されました)。

育成就労制度における外部監査人は、弁護士、社会保険労務士、行政書士の有資格者、その他育成就労の知見を有する者という高度な専門知識を持つ者に厳格に限定されており、単なる形式的なチェック役ではありません。

「入管法令や労働法令の違反がないか」

「監査などの業務が法令に定める要件に従って適正に行われているか」

これらをプロの目で監視し、外部の視点を加えることにより監理支援機関の業務の中立的な運営を担保しようとする、いわば「制度の番人」の一角を担う重要なポジションです。

2 外部監査人になるための2つの必須条件とは?

外部監査人に就任するためには、大きく分けて「能力・資格」に関するポジティブな要件と、利害関係がないことを求めるネガティブな要件「欠格事由」の2つをクリアする必要があります。

まず、「能力・資格」の面から見ていきましょう。

(1)監査を公正かつ適正に遂行することができる資格・能力があること

育成就労法施行規則第47条第2項第2号では、外部監査人の要件として以下のいずれかに該当することを求めています。

弁護士若しくは弁護士法人、社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人又は行政書士若しくは行政書士法人その他育成就労に関する知見を有する者

基本的には、法律の専門家である士業が想定されています。

「その他育成就労に関する知見を有する者」の枠組みもありますが、これには「出入国又は労働に関する法令について高度な知識・経験を有する者(例:入管法令や労働法を研究する大学教授など)」や「外部監査人に係る講習実施機関として告示されている機関であって相当の実績がある者」(※営利を目的としてない法人で直近2事業年度のいずれかの年において外部監査人に係る講習を20回以上実施していることが必要)などが該当するとされていることから、一般的な実務においては士業への依頼がスタンダードになるでしょう。

(2) 「養成講習」を修了していること

資格を持っているだけでは不十分です。

過去3年以内に、主務大臣が告示で定める「外部監査人に対する講習」を修了している必要があります(育成就労法施行規則第47条第2項第1号)。

法人が外部監査人になる場合は、実際に監査を担当する者が受講する必要があります。

制度が変われば、見るべきポイントも変わります。

たとえベテランの弁護士や社労士であっても、この「育成就労制度に対応した講習」を受講していなければ、外部監査人として選任することはできません。(※当分の間は、経過措置(育成就労法施行規則附則第4条)として、技能実習制度における「監理責任者等講習」の受講歴でも認められる規定がありますが、更新のタイミング等での再受講が必要になる点に注意が必要です。)

外部監査人の代表者名や所在地などについては、機構ホームページにおいて公表されるため、これに同意していることが必要です。

3 ここが落とし穴!外部監査人に「なれない」人

監理支援機関の皆様が最も注意すべきなのは、こちらの「欠格事由(なれない人)」の要件です。

育成就労制度では、「密接な関係を有しない者であることが徹底して求められます。

ここでのポイントは、監理支援機関との関係だけでなく、その傘下の「受入れ企業(育成就労実施者)」との関係も問われるという点です。

以下のいずれかに該当する場合、その人は外部監査人になれません。

(1) 監理支援機関側の関係者

当然ながら、自らの組織の人間が監査をすることはできません(自己監査の禁止)。

監理支援機関の現役又は過去5年以内の役職員

ここまでは従来通りですが、注意すべきは「過去5年」という期間です。

「退職したOBにお願いしよう」と考えている場合、退職から5年経過していなければNGとなります。

(2) 構成員(同業者)の関係者

商工会や事業協同組合の場合、その構成員(組合員)も制限の対象となります。

監理支援機関の構成員(ただし、同業種=育成就労産業分野に属する事業を営む者に限る)又はその現役若しくは過去5年以内の役職員

つまり、「同じ組合に入っている社長仲間」や「組合員の企業の社員」に外部監査を頼むことは、基本的にお互い身内とみなされ、認められません。

(3) 【見落としがち】他の団体や別の受入れ企業の関係者

実は、自らの組織や傘下企業だけでなく、以下の立場の人も外部監査人にはなれません。

①他の監理支援機関又はその役職員
②監理支援を行う「以外」の育成就労実施者(全く別の受入れ企業)又はその役職員
③外国の送出機関の現役又は過去5年以内の役職員

「他の監理団体の役員に頼む(お互いに監査し合う)」「全く関係ない別の受入れ企業の社長に頼む」といったことも禁止されています。

(4)【重要】受入れ企業(育成就労実施者)側の関係者

ここが今回、特に強調したいポイントです。外部監査人は、監理支援機関が「受入れ企業に対して適切な指導を行っているか」をチェックします。

したがって、指導される側の受入れ企業と密接な関係にある人は、外部監査人になれません。

①監理支援を行う育成就労実施者(受入れ企業)又はその現役若しくは過去5年以内の役職員
②過去5年以内に監理支援を行った育成就労実施者又はその現役若しくは過去5年以内の役職員
③ ①・②の者の配偶者又は二親等以内の親族

そして、さらに重要なのが次の「密接関係者」の規定です。

(5) 【最重要】社会生活において「密接な関係」を有する者

規則では、上記のような形式的な役職関係だけでなく、実質的な利害関係も排除しています。

具体的には、「外部監査の公正が害されるおそれがあると認められる者」です。

運用要領では、その具体例として以下のようなケースが想定されています。

①監理支援機関が監理支援を行う「育成就労実施者(受入れ企業)」と顧問契約を結んでいる弁護士等
②監理支援機関が監理支援を行う「育成就労実施者」から定期又は臨時に会費の支払いを受けている法人
③監理支援機関の役職員と個人的に極めて親しい関係にある者

これが何を意味するか、次の章で具体的なケーススタディとして見ていきましょう。

4 ケーススタディ|「今まで通り」がNGな具体例

「これまでの技能実習制度では問題なかった(あるいは見過ごされていた)が、育成就労制度では明確にNGまたはリスクが高い」と考えられるケースを紹介します。

ケースA|受入れ企業の「顧問社労士」にお願いしている

【状況】
監理支援機関Xは、外部監査を社労士のA先生に依頼したい。
A先生は、Xが監理している受入れ企業Y社の顧問社労士も務めており、Y社の給与計算や就業規則作成を請け負っている。

【判定:NGの可能性大】
これは典型的な利益相反です。

外部監査人としてのA先生は、受入れ企業Y社が「労働法令を守っているか」「残業代を正しく払っているか」を、監理支援機関Xが正しくチェックしているかを監査しなければなりません。

しかし、Y社の顧問であるA先生にとって、Y社はクライアントです。

クライアントの不正や不備を厳しく指摘できるでしょうか?

また、もしY社で賃金不払いが起きた場合、給与計算をしていたA先生自身が責任を問われる可能性があり、「自分で自分の仕事を監査する」ことになります。

運用要領でも、「育成就労実施者と顧問契約を結んでいる弁護士」等は密接関係者として例示されており、このような兼任は認められない可能性が極めて高いです。

ケースB|監理団体の「元職員」にお願いしている

【状況】
監理団体で長年指導員を務めたBさんが3年前に退職し、行政書士として独立した。
「事情をよく知っているBさんに外部監査を頼もう」と考えている。

【判定:NG
「過去5年以内」に役職員であった者は、外部監査人になれません。
Bさんが退職して3年しか経っていない場合、まだ「身内」とみなされます。
5年が経過するまでは依頼できません。

ケースC|理事長の「親族」にお願いしている

【状況】
監理支援機関の理事長の弟が弁護士をしている。
「身内なら報酬も融通が利くし、信頼できる」として依頼しようとしている。

【判定:NG
役員の「二親等以内の親族」は欠格事由に該当します。
兄弟姉妹は二親等ですので、外部監査人にはなれません。

5 外部監査人が「監査」する内容

チェックリスト

選任された外部監査人は、具体的にどのような業務を行うのでしょうか。

報酬に見合った実効性のある監査が求められます。

(1) 3ヶ月に1回以上の「確認」= 定期監査

外部監査人は、3ヶ月に1回以上の頻度で、監理支援事業の各事業所について以下の確認を行い、外部監査報告書を作成して監理支援機関に提出しなければなりません。

責任役員及び監理支援責任者から報告を受けること。
☑ 申請者の事業所においてその設備を確認し、及び帳簿書類その他の物件を閲覧すること。

(2) 1年に1回以上の「同行監査」

外部監査人は、監理支援機関が受入れ企業に対して行う監査(3ヶ月に1回以上実施されるもの)に、各事業所ごとに1年に1回以上「同行」しなければなりません。

実際に受入れ企業の現場へ行き、以下の監査を行います。

監理支援機関の職員がちゃんと実地確認をしているか、実習生(育成就労外国人)との面談を適切に行っているか、企業の帳簿を正しくチェックしているかを、後ろからチェックするイメージです。

(3) 外部監査報告書の作成と提出

確認や同行監査の結果をまとめた外部監査報告書を作成します。

監理支援機関はこの報告書を保存し、行政庁への報告等に使用します。

6 今から始めるべき「外部監査人移行」への対策

育成就労制度への移行申請を見据え、監理支援機関は以下のステップで準備を進める必要があります。

ステップ1|現外部監査人の「利益相反」チェック

現在依頼している外部監査人が、傘下の受入れ企業の顧問をしていないか改めて確認してください。

受入れ企業の数が多い場合、全ての企業について確認が必要です。

「実はA社の就業規則を作っていた」「B社の労務相談に乗っていた」といった事実が後から発覚すると、許可要件を満たさないことになります。

ステップ2|契約内容の見直し

「名ばかり監査」は通用しません。

同行監査の旅費・日当: 遠隔地への同行が必要な場合、その費用負担や日程調整をどうするか。
報酬の適正化: 業務量(3ヶ月に1回の訪問、同行監査、報告書作成)に見合った報酬になっているか。安すぎる報酬は「名義貸し」を疑われる要因にもなります。

ステップ3|新規候補者の選定(必要な場合)

もし現在の外部監査人が要件を満たさない場合、早急に新しい候補者を探す必要があります。

「育成就労に詳しい」士業: 制度を理解していないと、適切な監査ができません。
完全に独立した第三者: 顧問契約等のしがらみがない、クリーンな第三者を選定することが、スムーズな許可取得への近道です。

サマリー|透明性の高い体制づくりが許可への鍵

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育成就労制度は、「外国人の人権保護」と「キャリアアップ」を主眼に置いた制度です。

その適正な運用を担保する外部監査人には、これまで以上に厳格な中立性が求められます。

「今までこれで通っていたから」という前例踏襲は危険です。特に「受入れ企業との癒着」を疑われるような人事配置は、許可審査で厳しくチェックされるポイントになります。

これまでの関係性を見直し、胸を張って「中立です」と言える外部監査人を選任すること。

それが、新しい制度下で信頼される監理支援機関として生き残るための第一歩となるでしょう。

準備が早すぎることはありません。

今のうちに、貴団体の監査体制を総点検してみてください。

この記事を書いた「Linolaパートナーズとは」

弁護士
弁護士

片岡 邦弘

Linolaパートナーズ法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属)
外国人労務特化型弁護士
1978年東京生まれ、東京在住

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