【技能実習】弁護士が「監理団体変更に旧監理団体の同意が必要か」について解説

  • #技能実習
2020.10.31

2021年1月21日から技能実習生の入国ができなくなりました。その結果何が起きたか?

 

■技能実習生に対するブローカーの増加
■監理団体間の技能実習生をめぐるトラブルの増加

 

等色々なことが起きていることは皆さんもご存じだと思います。

そこで、今回は、特に増えているであろう監理団体の変更について、「新監理団体への移行にあたり旧監理団体の同意は必要か」という点について解説していきたいと思います。

 

1. なぜ監理団体を変更するのか

実習実施者は監理団体を通じて技能実習生を受け入れます。
関係が良好なうちはいいのですが、

  • 対応が遅い
  • より監理費の安いところがいい

等の理由で実習実施者が監理団体の変更を希望することがあります。

しかしながら、監理団体の変更は、旧監理団体にとって収入源である監理費の減少をもたらすことから、新監理団体との間で紛争になる場合がとても多いのです。

 

2. 外国人技能実習機構が「監理団体等に変更があった場合の当事者間における同意について(周知)」を公表した意味

 

このことを裏付けるように、2020年10月15日、外国人技能実習機構は「監理団体等に変更があった場合の当事者間における同意について(周知)」なる書面をホームページにアップしています。


外国人技能実習制度の頁はこちら

主要な内容は下記のとおりです(下線は筆者)。

「監理団体又は実習実施者を変更する場合には、以下のとおり、関係する当事者間で争いとなることがないよう、当事者間での同意を得ることが望まれます。また下記(1)について、監理団体が契約する送出機関が監理団体の変更前と変更後で異なる場合は、そのことについて事前に技能実習生に説明するとともに、理解を得ておくことが望まれます。

(1)監理団体を変更する場合
対象となる技能実習生、実習実施者、変更前後の監理団体及び送出機関の5者の間での変更に係る同意

(2)実習実施者を変更する場合
対象となる技能実習生、監理団体、変更前後の実習実施者及び送出機関の5者の間での変更に係る同意」

 

監理団体の変更は送出し機関の変更を伴うこともあるので、紛争対応のトラブルを嫌った外国人技能実習機構が

「関係当事者間での同意を得ることが望ましい」とするのは無理もないことかと思います。

 

すなわち、それだけ監理団体間のトラブルが外国人技能実習機構に持ち込まれることが多いということを示しているといえるでしょう。

 

また、元々、監理団体の変更について、技能実習制度運用要領にも「関係する当事者間で争いとなることがないよう、同意を得ることが望ましい」としか書いていませんでした。

 

他方で、機構は、「よくあるご質問(その他)」(https://www.otit.go.jp/files/user/200316-11.pdf)において

3-1 「実習監理を行う監理団体を変更したいのですが、どのような手続きが必要ですか。」との問いに対し、「対象となる実習実施者、実習生、変更前後の監理団体及び取次送出機関の5者の間で、監理団体の変更について同意が必要となります」と未だに記載しています。

 

トラブルを嫌ったのか、一部の地方事務所は「5者間の同意が必須だ」などと言っていたのは、上記のQ&Aに沿った対応だったとも思われます。

技能実習計画の変更について定めた技能実習法11条には対象となる技能実習生、実習実施者、変更前後の監理団体及び送出機関の5者の間で変更にかかる同意を得なければならない、との規定はありません。

そうであれば、少なくとも技能実習法上は5者間の同意がなければ監理団体の変更認定ができない、という解釈を取ることは難しいでしょう。

 

(技能実習計画の変更)
第十一条 実習実施者は、実習認定を受けた技能実習計画(以下「認定計画」という。)について第八条第二項各号(第五号を除く。)に掲げる事項の変更(主務省令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣の認定を受けなければならない。
2 第八条第三項から第五項まで及び前二条の規定は、前項の認定について準用する。

(技能実習計画の認定)
第八条 技能実習を行わせようとする本邦の個人又は法人(親会社(会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第四号に規定する親会社をいう。)とその子会社(同条第三号に規定する子会社をいう。)の関係その他主務省令で定める密接な関係を有する複数の法人が技能実習を共同で行わせる場合はこれら複数の法人)は、主務省令で定めるところにより、技能実習生ごとに、技能実習の実施に関する計画(以下「技能実習計画」という。)を作成し、これを出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出して、その技能実習計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 技能実習計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 前項に規定する本邦の個人又は法人(以下この条、次条及び第十二条第五項において「申請者」という。)の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 法人にあっては、その役員の氏名及び住所
三 技能実習を行わせる事業所の名称及び所在地
四 技能実習生の氏名及び国籍
五 技能実習の区分(第一号企業単独型技能実習、第二号企業単独型技能実習若しくは第三号企業単独型技能実習又は第一号団体監理型技能実習、第二号団体監理型技能実習若しくは第三号団体監理型技能実習の区分をいう。次条第二号において同じ。)
六 技能実習の目標(技能実習を修了するまでに職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第四十四条第一項の技能検定(次条において「技能検定」という。)又は主務省令で指定する試験(次条及び第五十二条において「技能実習評価試験」という。)に合格することその他の目標をいう。次条において同じ。)、内容及び期間
七 技能実習を行わせる事業所ごとの技能実習の実施に関する責任者の氏名
八 団体監理型技能実習に係るものである場合は、実習監理を受ける監理団体の名称及び住所並びに代表者の氏名
九 報酬、労働時間、休日、休暇、宿泊施設、技能実習生が負担する食費及び居住費その他の技能実習生の待遇
十 その他主務省令で定める事項3~5 略

○技能実習法施行規則(抄)
(技能実習評価試験)第六条 法第八条第二項第六号の主務省令で指定する試験は、別表第一のとおりとする。
(技能実習計画の記載事項)第七条 法第八条第二項第十号の主務省令で定める事項は、次のとおりとする。一 申請者が既に法第十七条の規定による届出を行っている場合は、当該届出に係る実習実施者届出受理番号
二 法人にあっては、その役員の役職名及び法人番号(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第十五項に規定する法人番号をいう。第二十六条第一号において同じ。)
三 申請者の業種
四 技能実習責任者(法第八条第二項第七号に規定する技能実習の実施に関する責任者をいう。以下同じ。)の役職名
五 技能実習指導員(第十二条第一項第二号の規定により選任された技能実習指導員をいう。以下同じ。)及び生活指導員(同項第三号の規定により選任された生活指導員をいう。以下同じ。)の氏名及び役職名
六 技能実習生の生年月日、年齢及び性別
七 第三号技能実習に係るものである場合は、次のいずれかに該当する事項
イ 第二号技能実習の終了後第三号技能実習の開始までの間に本国に一時帰国した場合又は一時帰国する予定である場合にあっては、その一時帰国の期間又は一時帰国する予定の期間
ロ 第二号技能実習の終了後引き続き第三号技能実習を開始してから一年以内に技能実習を休止して一時帰国した後、休止している技能実習を再開する予定である場合にあっては、その一時帰国する予定の期間
八 第二号技能実習に係るものである場合は第一号技能実習に係る技能実習計画、第三号技能実習に係るものである場合は第二号技能実習に係る技能実習計画において定めた目標の達成状況
九 団体監理型技能実習に係るものである場合は、監理団体の許可番号、許可の別、監理責任者(法第四十条第一項に規定する監理責任者をいう。以下同じ。)の氏名、担当事業所の名称及び所在地並びに技能実習計画の作成の指導を担当する者の氏名
十 団体監理型技能実習であって取次送出機関があるものに係る場合は、当該取次送出機関の氏名又は名称

 

3. 監理団体として行うべきこと

2にて前述した通り、技能実習法上は監理団体の変更について旧監理団体の同意は不要であるというのが自然であり、実際、同意がなくても変更認定が下りているというケースは見受けられるところです。

 

しかしながら、「技能実習法上違法でなくても、相手方の利益を侵害する不法行為は成立する余地はある」ということに留意しなければなりません。

したがって、監理団体としては、トラブルになることを避けるためには周知に従い、可能な限り旧監理団体の同意を得ることが望ましいということは間違いないと思います。

でも、新監理団体がいくら意を尽くしても旧監理団体が納得しない、ということは容易に想定されます。その場合どうしたらいいのか。この場合、技能実習法の理念である技能実習生の保護に立ち返るべきでしょう。

技能実習生の同意を得るための努力を真摯に行い、技能実習生から監理団体変更についての同意を得ておくことで移管をすることは可能になると思われます。

上記機構の通知においても、

監理団体が契約する送出機関が監理団体の変更前と変更後で異なる場合は、そのことについて事前に技能実習生に説明するとともに、理解を得ておくことが望まれます。

とされているところであり、

 

① 監理団体の変更について事前に説明すること

② 監理団体の変更について書面で同意を得ておくこと

 

が重要であるといえるでしょう。もちろん、実習生を送り出した送出機関の同意も得ておくことが必要です。

 

4. まとめ

監理団体の変更においては、以下の点に留意するべきです。


✔変更認定を受けるのに旧監理団体の同意は不要であるが、トラブルを回避するためには同意を得ることが望ましいこと

✔同意を得ることが難しい場合であっても必ず実習生には事前に説明の上変更について同意を得ておくこと

 

少しでも不安がある場合はそのままにせず、専門家に速やかに相談すべきでしょう。

当事務所は、監理団体の変更手続きについての紛争については新監理団体・旧監理団体のいずれの立場でも対応した実績がございます。このテーマについてご相談を希望される場合は下記のお問い合わせフォームからお問い合わせください。

この記事を書いた「Linolaパートナーズとは」

弁護士
弁護士

片岡 邦弘

Linolaパートナーズ法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属)
外国人労務特化型弁護士/入管法届出済弁護士
1978年東京生まれ、東京在住

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