監理団体が行う監査とは?外国人労務特化型弁護士が詳しく解説!
- #外国人労務
- #技能実習
この記事を読むとわかること
☑︎監理団体団体が行う監査の概要がわかる ☑︎監理団体が行う監査を実施する際に気をつけるポイントがわかる ☑︎監理団体が受けるペナルティについてわかる ☑︎監理団体が適正な運営をするためのポイントがわかる |
\あわせて読みたい/ 失敗しない弁護士の選び方【監理団体向け】|〜外国人労務特化型弁護士監修〜 |
1 監理団体の行う監査とは?
技能実習法第9条第8号によれば、団体監理型技能実習の場合、実習実施者は、技能実習計画の作成について指導を受けた「監理団体」による実習監理を受けなければならないとされています。
このため、監理団体は、3カ月に1回、実習実施者のもとに監査に行かなければなりません(いわゆる「定期監査」技能実習法施行規則第52条1号柱書)。
具体的な監査項目については、主に監査実施概要(参考様式4-7)を基に実施されることが多いと思いますが、
特に重要な労働関係法令の監査項目については以下をご参考になさってください。
出典:厚生労働省「監理団体による監査のためのチェックリスト」
労働関係法令の監査項目の概要は、以下のとおり「14項目」に及びます。
番号 | 項目 |
※ | 前回の監査の指摘に対する改善状況 |
1 | 労働条件の明示(労働基準法第15条) |
2 | 賃金台帳の作成(労働基準法第108条ほか) |
3 | 労働時間管理の適正化 |
4 | 賃金支払(労働基準法第24条) |
5 | 強制貯金の禁止(労働基準法第18条) |
6 | 時間外・休日・深夜割増賃金支払(労働基準法37条) |
7 | 最低賃金(最低賃金法第4条) |
8 | 労働時間等(労働基準法第32条、第34条、第35条、第39条ほか) |
9 | 寄宿舎(労働基準法第96条ほか) |
10 | 安全衛生教育(労働安全衛生法第59条、労働安全衛生規則第35条、第36条など) |
11 | 就業制限(労働安全衛生法第61条、労働安全衛生法施行令第20条) |
12 | 健康診断の実施(労働安全衛生法第66条) |
13 | 労働保険・社会保険 |
14 | 技能実習生が安心して実習を行うことができる環境づくり |
各項目の詳細については、厚生労働省「監理団体による監査のためのチェックリスト」をご確認ください。
ただし、このチェックリストは働き方改革以前のものなので、労働時間・休日等に関しては厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」等を参照していただくことが必要です。
監査項目が多岐に及ぶことから、監理団体の監査担当者のやり方や習熟度に左右されることが多いのが現実ですが、抜け漏れなく適正な監査を行うことが大切です。
なお、令和5年5月31日付けで、外国人技能実習機構は、「建設職種安全衛生チェックリスト」を公表しました。
「このチェックリストは、建設職種の外国人技能実習生を受け入れる実習実施者に対して、監理団体が定期監査を実施する際にご活用いただくことを目的として作成したもの」とされていることから、今後建設職種の監査にあたっては、必ずこの内容をおさえるようにしていただくことが必要です。
また、監査を実施してから2ヶ月以内に「監査報告書(省令様式第22号)」を実習実施者の住所地を管轄する機構の地方事務所・支所の指導課に提出しなければなりませんので、忘れないようにしましょう。
▼あわせて読みたい▼ 「外国人技能実習機構による実地検査とは?外国人労務特化型弁護士が詳しく解説!」 |
(注意!) 臨時監査に関すること
技能実習法第16条第1項各号(実習認定の取り消し事由)のいずれかに該当する可能性がある場合は、監理団体は直ちに『臨時監査』を行わなければなりません。
3ヶ月に1度行われる定期監査のほか、実習実施者による報告や技能実習生からの相談などが発端となり臨時監査が行われます。
例えば、実習実施者が認定計画に従った技能実習が未実施であるとの情報提供があったケースや不法就労者の雇用や暴行事件などの各種法令違反の疑いがあり情報提供を得たケースなどが該当します。
技能実習法
(認定の取消し等) 第十六条 出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、実習認定を取り消すことができる。 一 実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていないと認めるとき。 二 認定計画が第九条各号のいずれかに適合しなくなったと認めるとき。 三 実習実施者が第十条各号のいずれかに該当することとなったとき。 四 第十三条第一項の規定による報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の 帳簿書類の提出若しくは提示をし、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。 五 第十四条第一項の規定により機構が行う報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示の求めに虚偽の報告若しくは虚偽の帳簿書類の提出若しくは提示をし、又は同項の規定により機構の職員が行う質問に対して虚偽の答弁をしたとき。 六 前条第一項の規定による命令に違反したとき。 七 出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき。 |
▼初めて監査担当になった監理団体の新人職員が押さえておくべきポイントとは? |
2 監理団体が監査を実施する際に気を付けるべきポイント
法令を遵守をすべきことは監理団体の義務であることはいうまでもありませんが、さまざまな法令に抵触し許認可を失う事例は珍しいことではありません。
万が一、法令に違反して放置してしまうと「知らなかった。」では済まされない大きなペナルティを負うということを監理団体の皆様には、今一度ご認識いただきたいところです。
監理団体が監査を実施する際に原則として以下のように定められています。
① 技能実習の実施状況を実地に確認すること
② 技能実習責任者及び技能実習指導員から報告を受けること ③ 技能実習生の4分の1以上と面談すること ④ 実習実施者の事業者の事業所の設備、帳簿書類等を閲覧すること ⑤ 技能実習生の宿泊施設等の生活環境を確認すること |
参照:出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」P190
根拠となる関係法令:「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則(平成二十八年法務省・厚生労働省令第三号)(監理団体の業務の実施に関する基準)第52条」
技能実習制度運用要領において、「運用上問題が生じやすい部分として、例えば、割増賃金の不払、労働時間の偽装、技能実習計画とは異なる作業への従事、実習実施者以外の事業者での作業従事、不法 就労者の雇用、入国後講習期間中の業務への従事、暴力、脅迫やハラスメント等の人権侵害行為などが、過去の不正行為事例として多く認められています。」との記載があります。
これらは、監査において重点的に確認しておかなければならないポイントであると言えるでしょう。
具体的には、 「認定計画と異なる作業に従事していないか」「雇用契約に基づき適切に報酬が支払われているか」「旅券・在留カードの保管を行っていないか」など事実関係について確認し、技能実習計画に従って技能実習を行わせていない事実、出入国・労働関係法令に違反する事実があれば、適切に指導を行わなければなりません。
そして、 「認定計画と異なる作業に従事していないか」については、実習実施予定表と照合して確認するだけでなく、技能実習生が移行対象職種・作業に従事している場合には、作業内容が審査基準に定める必須業務等に合致しているかを必ず確認しなければなりません。
監査は上記のとおり確認の上、必要な指導を行うものであり、このような確認や指導が適切に行われていない場合、十分な監査が行われているとは言えない、とされています。
実務的には、労働時間の管理と残業代が適切に支払われているか、という点については特に重点的に確認する必要があります。
最低限、現場でタイムカードや賃金台帳を受け取って、照らし合わせを行い、残業代の計算があっているか、という点は検証しておかないと、後に機構から監査内容について不十分であるとの指摘をうけるおそれがある、ということは実務をやっているとよく理解いただけるところではないでしょうか。
3 監理団体が受けるペナルティとは
技能実習法によれば、不正行為があった場合に監理団体が受けるペナルティ(行政処分)は以下のとおりとなりますので、ご参考になさってください。
実務的には是正指導や是正勧告をうけて、一定期間を指定されその是正を求められることが通常ですが、違反が重大な場合、直ちに行政処分に及ぶような場合もありえます。日頃から関係法令を遵守することはもちろんのこと、改善点があれば迅速に対応することが大切です。
罰則 | 事由 |
許可・認定の取消し(法16条1項、37条1項) | 重大な許可・認定基準違反、法令違反等があれば取消し |
業務停止命令(法37条3項、監理団体のみ) | 許可基準違反や法令違反に対し、期間を定めて業務停止を命令(同時に改善命令も可) |
改善命令(法15条1項、36条1項) | 出入国・労働関係法令(技能実習法を含む)違反があれば、期間を定めて改善命令 |
※事業者名簿を公表 | 業務停止命令、改善命令に違反した場合 |
外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図ることを目的として、平成29年11月1日に、技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)が施行されました。
当たり前のことですが、技能実習生は「労働者」です。
日本人労働者と同様に、労働に関する法令により保護されていますので、労働基準法をはじめ最低賃金法、労働安全法だけではなく、妊娠・出産等による不利益扱いを禁止する男女雇用機会均等法などもおさえ、現場においても日頃から周知徹底しておくことが必要です。
違法行為の防止及び摘発のためにも、主務大臣等や機構が行う事務(実地検査など)や実習実施者、監理団体は留意しなければなりません。
4 監理団体が適正な運営をするためのポイント
これまで監理団体が行うべき監査の概要や監査のポイント、違反した場合のペナルティなどをみてきました。
監理団体として適正な運営をする為には、専門的な知識も不可欠となり、それ故にハードルが高いこともまた事実です。
それでは、監理団体が適正な運営をするためには、どうすれば良いのでしょうか?
“第三者の目”として専門家(できれば弁護士が望ましい)を置き適法性の担保を図る
監理団体を適正に運営する為には、外国人労務分野の現場に精通した弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
よくご相談を受ける際に、「顧問弁護士に相談したら専門外だから対応できませんと言われた。」「一般的なアドバイスばかりで問題解決に至らなかった。」という声が少なくありません。
しかしながら、技能実習法を取り扱う弁護士は多くないので、具体的な事案に応じたアドバイスをすることは容易ではありません。
監理団体の皆様が把握していなければならない関係法令は広範且つ複雑です。
繰り返しになりますが、健全な運営及びリスク回避のためにも、日頃から技能実習法実務に精通した専門家をパートナーとすることをおすすめします。
また、既に、顧問弁護士が置かれている企業においても、技能実習に詳しい弁護士は一握りであるため、何かトラブルが起きた時に対応できないことがあります。
そのようなケースの場合は、新たに弁護士を探さなければならず、手間と費用が発生してしまいます。
そうならない為にできることは何でしょうか?
それは、外国人労務専門であり技能実習法特有の問題解決やリスク回避のアドバイスを含め、その他民事・刑事分野の経験豊富な弁護士を探すことです。
ワンストップで企業の健全な運営をサポートすることができますので、メリットは小さくないといえるのではないでしょうか。
5 サマリー
監理団体が実習実施者に対して行う定期監査は、不正の早期発見・改善に繋げることのできる機会ともいえますので、有効に活用しましょう。
監査にあたっては、実習実施機関における労働関係法令をはじめとするさまざまな視点からチェックすることが大切であり、健全な運営及びリスク回避のためにも、日頃から専門家をパートナーとすることをおすすめします。
6 まとめ
・監理団体は、3カ月に1回、実習実施者のもとに監査に行かなければならない(いわゆる定期監査)。
・監理団体が監査を実施する際に気を付けるべきポイントは、「技能実習の実施状況を実地に確認すること」を含み5つある。
・監理団体は、適正な監査を実施しなければペナルティを受ける。
・監理団体が適正な運営をするためのポイントは“第三者の目”として専門家(できれば弁護士が望ましい)を置き適法性の担保を図ること。
この記事を書いた「Linolaパートナーズとは」
あなたのお悩み相談できます
オンラインでの相談も可能です記事を読んで疑問に思っている点を確認したい
自分たちの問題点の洗い出しをしたい
ご要望がございましたら、お電話・お問い合わせフォームからお気軽にお問合せ下さい。